こんにちは。多肉植物研究所、運営者の所長です。
植物を育てていると、誰もが一度はぶつかる、避けては通れない「壁」がありますね。それは、園芸用土の二大巨頭である「鹿沼土(かぬまつち)」と「赤玉土(あかだまつち)」の成長比較に関する深い疑問ではないでしょうか。

「ホームセンターに行けば必ず隣同士で山積みにされているし、どちらもコロコロした粒状の土だから、結局のところ同じようなものでしょ?」
もしあなたがそう思っているとしたら、それは植物の成長にとって非常に大きなチャンスを逃しているかもしれません。実は、この二つの土は見た目こそ似ていますが、その中身、生まれ、そして植物の根に与える物理的・化学的影響は、水と油ほどに異なる「全くの別物」なのです。

私自身、園芸を始めたばかりの頃は「とりあえず基本と書かれている赤玉土を使っておけば安心だろう」という安易な考えで、すべての植物を同じ土で植えていました。しかし、ある時、どうしても徒長(茎が間延びすること)して形が崩れてしまうエケベリアに悩み、思い切って「鹿沼土メイン」の配合に変えてみたのです。するとどうでしょう。数ヶ月後、そこには今まで見たこともないほどギュッと引き締まり、宝石のように鮮やかに紅葉した株の姿がありました。

「土を変えるだけで、ここまで植物の顔が変わるのか」
その時の衝撃は今でも忘れられません。逆に、大きく育てたい観葉植物に鹿沼土ばかりを使ってしまい、いつまで経っても成長しないという失敗も経験しました。土選びは、単なる栽培の一工程ではなく、植物の「未来のデザイン」を決める設計図そのものなのです。

今回は、私が長年の栽培実験と数え切れないほどの失敗を経てたどり着いた、それぞれの土の物理的・化学的特性の違いから、具体的な植物ごとの最適解まで、文字通り「徹底的」に解説します。この記事を読み終える頃には、あなたは自分の育てたい植物の理想の姿に合わせて、自在に土を操る「土使いの達人」への第一歩を踏み出しているはずです。

この記事のポイント
  • 鹿沼土と赤玉土の地質学的起源と、それが根に与える物理的な影響の違い
  • 植物の生死を分けるpH(酸度)とCEC(保肥力)の科学的メカニズム
  • 多肉植物、観葉植物、サボテンなど、タイプ別の最適な配合比率と成長予測
  • 挿し木の発根管理や微塵抜きなど、プロが実践する栽培テクニックの真髄

基礎から学ぶ鹿沼土と赤玉土の成長比較

基礎から学ぶ鹿沼土と赤玉土の成長比較

まずは、園芸コーナーで隣り合って置かれているこの二つの土が、根本的にどう違うのかを深掘りしていきましょう。単なる「色の違い」ではありません。その生い立ち(起源)を知ることで、植物の根っこが土の中でどのような環境にさらされているのか、そのミクロの世界が見えてくるはずです。

鹿沼土と赤玉土の違いと物理構造

植物の根にとって、土の物理的な構造は、人間でいうところの「住環境」そのものです。通気性が悪ければ窒息し、保水性がなければ脱水症状に陥ります。この環境を決定づけるのが、土の「構造」です。

赤玉土:関東ローム層が生んだ「団粒構造」の奇跡

まず赤玉土ですが、これは関東平野を広く覆う「関東ローム層」という火山灰が降り積もった地層から採れる「赤土」を原料としています。採掘された段階では単なる赤土ですが、これを乾燥させ、ふるいにかけて粒の大きさを揃えたものが赤玉土として販売されています。

赤玉土の最大の特徴にして最大の武器は、「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」です。これは、微細な粘土粒子や腐植が集合して、一つの「粒」を形成している状態を指します。この粒の中には目に見えない無数の小さな隙間(ミクロポア)があり、ここに水を強力に保持します。一方で、粒と粒の間には大きな隙間(マクロポア)ができ、ここを空気が通り抜けます。

つまり、赤玉土は「水を含みながら、空気も通す」という、相反する機能を高次元で両立させた、まさに植物のためにあつらえたような土なのです。これが、赤玉土が「万能用土」「基本用土の王様」と呼ばれる物理的な理由です。

鹿沼土:太古の火山が生んだ「多孔質」のスポンジ

一方、鹿沼土は栃木県鹿沼市周辺で採れる「軽石」の一種です。約3万年前とも言われる赤城山の噴火によって降り積もった軽石層が起源で、地質学的には「浮石(パミス)」に分類されます。手に取ってみると分かりますが、赤玉土に比べて圧倒的に軽いです。

鹿沼土の構造は、赤玉土のような粘土の集合体ではなく、火山ガラス質が発泡して固まった「多孔質構造」です。分かりやすく言えば、硬いスポンジのようなものです。粒の表面にも内部にも無数の穴が空いており、水を与えると、その穴の中に表面張力で水を保持します。

しかし、赤玉土の粘土質とは異なり、水を「吸着」する力は弱いため、余分な水は重力に従って素早く流れ落ちます。つまり、鹿沼土は「圧倒的な通気性と排水性」を誇る用土であり、根に対して常に新鮮な酸素を供給し続けることができる「呼吸する土」と言えます。

※以下の表は横にスクロールしてご覧いただけます。

比較項目 赤玉土(万能・保水型) 鹿沼土(排水・通気型)
原料・起源 関東ローム層の赤土
(火山灰土・粘土質)
鹿沼地方の軽石層
(火山砂礫・ガラス質)
構造タイプ 団粒構造
粘土が寄り集まってできている。
多孔質構造
軽石そのもので穴だらけ。
重さ(比重) 重い
(背の高い植物も安定する)
非常に軽い
(ハンギング等は楽だが倒れやすい)
硬さ・耐久性 崩れやすい
(1〜2年で泥化し、通気性が落ちる)
比較的硬い
(特に硬質鹿沼土は数年持つ)
保水メカニズム 粘土粒子が化学的・物理的に水を吸着。 細孔に物理的に水が入るだけ。
乾きが非常に早い。

鹿沼土のpHが植物に及ぼす影響

鹿沼土のpHが植物に及ぼす影響

土の物理構造と同じくらい、あるいはそれ以上に植物の生死を分けるのが、土壌の酸度(pH)です。ここを理解せずに土を選ぶことは、海水魚を真水で飼おうとするような危険性をはらんでいます。

鹿沼土の強酸性がもたらす「毒」と「薬」

鹿沼土の最大の特徴の一つは、そのpHが4.0〜5.0前後という「強い酸性」を示すことです。これは、鹿沼土の成分中に含まれるアルミニウムイオンなどが溶け出しやすい性質を持っているためです。

多くの一般的な草花、野菜、そして観葉植物の多くは、pH6.0〜6.5前後の「弱酸性から中性」を好みます。もし、これらの植物を鹿沼土100%の土に植えるとどうなるでしょうか。強すぎる酸性環境下では、植物の根が水素イオンによる直接的な障害を受けるだけでなく、リン酸などの主要な栄養素が土壌中のアルミニウムと結合してしまい、植物が吸収できない形(難溶性)に変化してしまいます。これを「リン酸の固定」と呼びます。

結果として、「肥料はやっているのに全然育たない」「葉の色が薄く、元気がない」という微量要素欠乏症のような症状が現れます。これが、一般的に鹿沼土の単用が推奨されない理由です。

酸性を好む植物には「唯一無二」の相棒

しかし、この強酸性が逆に「薬」となる植物も存在します。それが「好酸性植物」と呼ばれるグループです。代表的なものは以下の通りです。

  • サツキ、ツツジ、シャクナゲ
  • ブルーベリー
  • 一部の東洋蘭(シュンラン、カンランなど)
  • 食虫植物(ハエトリソウ、ウツボカズラなど)

これらの植物は、酸性の土壌環境下で溶解度が高まる鉄やマンガンなどの微量要素を効率的に吸収する生理的メカニズムを持っています。そのため、中性の土では逆に調子を崩してしまいます。サツキ栽培において鹿沼土が「絶対的なエース」として君臨し続けているのは、このpH特性によるものが大きいのです。

一方、赤玉土はpH5.5〜6.5程度の「弱酸性」です。この数値は、日本の雨が多い気候に適応した多くの植物にとってのストライクゾーンであり、pH調整の手間を省ける「安心感」が最大のメリットです。

鹿沼土に栄養はあるのか?

初心者の方から頻繁にいただく質問に、「鹿沼土だけで育てると栄養不足になりますか?」というものがあります。この答えは、明確に「YES」です。

まず大前提として、鹿沼土も赤玉土も、基本的には岩石や土が由来の「無機質用土」です。腐葉土や堆肥のように、微生物によって分解されて栄養になる有機成分は一切含まれていません。つまり、肥料(窒素・リン酸・カリ)を人為的に与えない限り、植物は水だけで生きることになり、やがて栄養失調で成長が止まります。

保肥力(CEC)という「土の胃袋」の大きさ

さらに重要なのが、与えた肥料をどれだけ土の中に留めておけるかという能力、専門用語で「保肥力」あるいは「CEC(塩基置換容量)」と呼ばれる数値です。これを「土の胃袋の大きさ」とイメージしてください。

  • 赤玉土(胃袋が大きい): 粘土鉱物(アロフェンなど)を多く含んでいるため、電気的にプラスの荷電を持つ肥料成分(アンモニウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)を強く吸着し、一時的にストックする能力が高いです。一度に多めの肥料を与えても、土がそれをキャッチし、植物が欲しがるときに徐々に放出する「バッファー(緩衝)機能」が働きます。
  • 鹿沼土(胃袋が小さい): 軽石質であるため、イオン吸着能力が赤玉土に比べて著しく低いです。液肥を与えても、植物がその瞬間に吸収しきれなかった分は、土に留まることなく、水やりとともに鉢底から流れ出てしまいます(リーチング)。

※以下の表は横にスクロールしてご覧いただけます。

比較項目 赤玉土(高い) 鹿沼土(低い)
栄養保持力
(CEC)
◎ 高い
粘土鉱物が肥料分をキャッチし、ストックする。
△ 低い
肥料を吸着しにくく、水と共に流れ出てしまう。
肥料管理 一度に与えても肥料焼けしにくく、効き目が長持ちする。 こまめに少量ずつ与えるか、緩効性肥料が必須。
成長への影響 栄養を安定供給できるため、成長が早い。 栄養が切れやすいため、成長は緩やかになる。

つまり、鹿沼土メインの栽培では、肥料の「持ち」が非常に悪いのです。そのため、「薄い液肥を頻繁に与える」か、「コーティングされた緩効性肥料(マグァンプKなど)を混ぜ込んでおく」といった工夫が必須となります。

鹿沼土と赤玉土のメリットを整理

鹿沼土と赤玉土のメリットを整理

ここまで見てきたように、両者は全く異なる性質を持っています。どちらが優れているかではなく、あなたの栽培環境や管理スタイル(水をやりすぎるタイプか、忘れがちなタイプか)に合わせて「適材適所」で選ぶことが成功への鍵です。

※以下の表は横にスクロールしてご覧いただけます。

項目 赤玉土のメリット・特徴 鹿沼土のメリット・特徴
水管理のしやすさ 水持ちが良く、水やりの回数を減らせる。
しっとりした環境を好む植物向き。
乾きが早く、毎日水やりしても根腐れしにくい。
乾燥を好む植物や、水をやりすぎる人向き。
視認性
(水やりのサイン)
濡れると色が濃い茶色になり、乾くと薄くなる。
色の変化で水やりのタイミングが分かりやすい。
濡れると鮮やかな黄色(黄金色)になり、乾くと白っぽくなる。
色の変化が極めて明確で、化粧砂としても美しい。
物理的寿命
(粒の崩れ)
1〜2年で粒が崩れて微塵になりやすい(単粒化)。
定期的な植え替えが必須。
粒子が硬く、物理的な圧迫に強い。
特に「硬質鹿沼土」を選べば数年は通気性を維持できる。
コケ・藻の発生 保水性が高いため、表面に緑色の藻やコケが生えやすい。 表面がすぐに乾くため、藻やコケが発生しにくい。
清潔感を維持しやすい。

赤玉土は「育てやすさのバランス型」であり、初心者でも水やりの頻度さえ間違えなければ失敗が少ない土です。一方、鹿沼土は「根腐れ防止の特化型」であり、特に水のやりすぎで植物を枯らしてしまいがちな人にとっては、最強の救世主となり得ます。自分の性格に合わせて土を選ぶというのも、園芸の面白い側面の一つです。

挿し木での発根率と腐敗リスク

植物を増やす楽しみの一つ、「挿し木」。この成功率を左右するのも、土の選び方です。成功率を上げるためには、カットした枝の断面(切り口)をいかに清潔に保ち、かつ適度な水分と酸素を供給するかが鍵となります。

私の経験では、どちらも「無菌」であるため、挿し木用土としては非常に優秀です。 通常の園芸用土に含まれる有機物(堆肥など)は、切り口から雑菌が侵入して腐敗させる原因になりますが、赤玉土も鹿沼土も高温処理や乾燥工程を経ている無機物なので、そのリスクが極めて低いのです。

では、どう使い分けるべきか。それは「腐敗リスク」と「乾燥リスク」のどちらを重視するかで決まります。

※以下の表は横にスクロールしてご覧いただけます。

比較項目 赤玉土(小粒) 鹿沼土(細粒・小粒)
主な特徴 保水性が高い
切り口を乾燥させない。
通気性が高い
切り口に酸素を送る。
おすすめの植物 紫陽花、バラ、観葉植物
(水を好む植物)
多肉植物、サボテン、ゼラニウム
(蒸れに弱い植物)
注意点 水をやりすぎると腐ることがある。 水切れで萎れてしまうことがある。
発根後の活着 根張りが良いが、植え替え時に土が落ちやすい。 根が軽石の穴に入り込み、ガッチリと掴む。

【重要】再利用は厳禁!新品を使おう
どちらを使うにしても、挿し木に使う土は必ず「新品」を使ってください。一度でも植物を植えた土には、目に見えない雑菌やウイルス、線虫などが潜んでいる可能性があります。成功率を高めるためには、ここだけはケチらずに新しい土を用意しましょう。

実践!鹿沼土と赤玉土の成長比較検証

実践!鹿沼土と赤玉土の成長比較検証

ここからは、実際に私が多肉植物や観葉植物を育てて感じた、成長の違いや使いこなしのテクニックについて、より実践的な内容をお伝えしていきます。机上の空論ではなく、現場での「どう育てたいか」という目的意識によって、選ぶ土が変わってくるんですよ。

多肉植物の鹿沼土のみ栽培の結果

多肉植物界隈、特にエケベリアやハオルチア、アガベの愛好家の間では「鹿沼土100%(または鹿沼土+軽石のみ)」での栽培が一つの確立されたスタイルとなっています。私も実験的にいくつかの株を鹿沼土単体で育ててみましたが、その結果は赤玉土主体のものとは全く異なる、非常に興味深いものでした。

ストレスが作り出す「美」の逆説

鹿沼土単体で育てると、排水性が良すぎるため、植物は常に慢性的な「軽い水不足」の状態に置かれます。さらに保肥力も低いため、栄養も最低限しか吸収できません。これだけ聞くと植物にとって過酷で悪い環境のように思えますが、多肉植物においてはこの厳しい環境こそが「美」を引き出すスイッチになるのです。

水分と栄養が制限されると、植物は生き残るために成長(細胞分裂)を抑制し、代わりに細胞内の糖分濃度を高め、紫外線から身を守るためにアントシアニンなどの色素を合成します。その結果、以下のような変化が起こります。

※以下の表は横にスクロールしてご覧いただけます。

比較項目 赤玉土ベース(栄養豊富・水持ち良) 鹿沼土ベース(栄養少・水はけ良)
成長速度 速い
半年で一回り以上大きくなる。
とにかく大きくしたいならこっち。
遅い
じっくりと時間をかけて育つ。
盆栽のように作り込むイメージ。
草姿・形状 葉が長く、広がりやすい。
日照不足だとすぐに徒長する。
葉が短く、コンパクトに締まる。
ロゼットが美しく整う。
色・紅葉 緑色が濃く、紅葉は遅め。
肥料が効いている証拠。
ストレスにより、紅葉が鮮烈。
透明感のある色が出やすい。
根の状態 太い根が長く伸びる。 水分を求めて、細かい根(細根)がびっしり張る。

「大きくしたくない」「今の可愛い形のまま維持したい」「コンテストに出すような整った姿にしたい」という方には、鹿沼土のみの栽培は非常に理にかなっています。逆に、苗をとにかく大きくして増やしたい生産者のような目的がある場合は、この方法は不向きです。

観葉植物における使い分けのコツ

観葉植物における使い分けのコツ

モンステラ、フィカス(ゴムの木)、パキラなどの観葉植物を室内で育てる場合、成長速度よりも優先すべき事項があります。それは「清潔感(衛生面)」と「コバエ対策」です。

リビングの平和を守る「鹿沼土マルチング」

室内園芸の最大の敵といっても過言ではない「キノコバエ」。彼らは腐葉土や有機入り培養土に含まれる腐植質や菌類を餌にし、湿った土の表面に卵を産み付けます。ふと気づくとリビングにコバエが飛び回っている…なんて事態は絶対に避けたいですよね。

そこで私が強く推奨しているのが、鹿沼土の「化粧砂(マルチング)」としての活用です。鹿沼土は無機質で清潔なため、コバエが餌として認識しません。観葉植物の用土として、表面の3〜5cm程度を鹿沼土(小粒〜中粒)で厚く覆うだけで、コバエが卵を産み付ける有機質の土を物理的に隠すことができ、発生率を劇的に(体感で9割以上)下げることができます。

また、黄色い鹿沼土は見た目にも明るく清潔感があり、水を含むと色が変わるため「水やりのサイン」としても機能します。まさに一石三鳥のテクニックです。

長期栽培の「骨材」としての役割

また、基本用土として混ぜ込む場合も優秀です。赤玉土は経年劣化で粒が崩れて泥状になり、鉢底で詰まって通気性を悪化させますが、硬い鹿沼土を2〜3割混ぜておくと「骨材(スケルトン)」の役割を果たします。コンクリートにおける砂利のようなものです。これにより土の中に物理的な空間が確保され続け、頻繁に植え替えができない大型の観葉植物でも、数年にわたって根腐れを防ぐことができるのです。

鹿沼土と赤玉土を混ぜる割合の解

「鹿沼土か、赤玉土か」という二者択一ではなく、結局のところ「ブレンドしていいとこ取り」をするのが、最もリスクが低く、多くの植物にとって快適な環境を作る方法です。

私が長年の栽培経験の中で、数え切れないほどの失敗を経てたどり着いた、汎用性が高く失敗の少ない「黄金比」をご紹介します。これをベースに、ご自身の環境に合わせて微調整してみてください。

※以下の表は横にスクロールしてご覧いただけます。

対象植物 推奨ブレンド比率 配合の狙いと解説
多肉植物全般
(エケベリア・セダム等)
赤玉土(小粒) 4 :
鹿沼土(小粒) 3 :
腐葉土(または堆肥) 3
【基本の黄金比】
最も標準的なバランス。赤玉土で保水し、鹿沼土で排水性を確保、腐葉土で微量要素と微生物を補給します。市販の「多肉植物の土」もこれに近い構成が多いです。
アガベ・塊根植物
(パキポディウム等)
赤玉土(硬質) 3 :
鹿沼土(硬質) 4 :
軽石(日向土) 2 :
ゼオライト 1
【排水性最優先】
腐葉土は入れず、無機質のみで構成します。彼らは根腐れしやすいため、鹿沼土と軽石の比率を高め、とにかく水が滞留しないようにします。
観葉植物
(室内管理メイン)
赤玉土(中粒・小粒) 6 :
鹿沼土(中粒) 2 :
腐葉土 2
【保水+防腐】
水切れを防ぐために赤玉土をベースにします。室内なら腐葉土をさらに減らし、パーライトやバーミキュライトに置き換えるのもアリです。

もちろん、これらはあくまで目安です。例えば、「風通しが良すぎるベランダですぐ土が乾く」という環境なら赤玉土を増やし、「日当たりが悪くて土がなかなか乾かない」という環境なら鹿沼土を増やす。このように、自分の栽培環境に合わせて比率をカスタマイズできるようになれば、あなたはもう初心者卒業です。

目的別で鹿沼土と赤玉土を使い分けよう

目的別で鹿沼土と赤玉土を使い分けよう

成長比較の総まとめとして、あなたの「目的」に合わせて、どちらの土をメインに据えるべきかを明確にしておきましょう。ここがブレると、土選びもブレてしまいます。

目的A:とにかく大きく育てたい!ボリュームを出したい!

この場合は、迷わず「赤玉土メイン」を選んでください。
根がしっかりと水を吸い上げ、肥料成分を保持できる環境を作ることで、植物の「栄養成長(葉や茎を伸ばす成長)」が促進されます。バイオマス(植物体の量)の増加速度は、赤玉土主体の方が圧倒的に速いです。特に成長期の春から秋にかけて、グングン大きくしたい苗には赤玉土多めの配合が適しています。

(出典:農林水産省『土づくりとは – 土壌の物理性について』
※公的機関の資料でも、土壌の団粒構造(赤玉土の特徴)が作物の生育量に正の影響を与えることが示されています。

目的B:形を崩したくない!徒長させたくない!根腐れが怖い!

この場合は、「鹿沼土メイン」、あるいは鹿沼土の比率を5割以上に設定しましょう。
厳しい環境を作ることで、植物を「スパルタ教育」し、頑丈で引き締まった姿に育て上げることができます。日本の高温多湿な夏越しが苦手な植物や、冬場の休眠期に水を切りたい場合にも、鹿沼土主体の排水性は大きな武器になります。大きくはなりませんが、「現地の厳しい環境で育ったようなワイルドな姿」を目指すならこちらです。

微塵が成長を止める原因になる

最後に、土の種類の選定と同じくらい、いや、長期的な視点で見ればそれ以上に重要な栽培テクニックをお伝えします。それは「微塵(みじん)抜き」です。

ホームセンターで買ってきた土の袋を開けると、粒が揃っているように見えますが、実は輸送中に粒同士が擦れ合って発生した粉末状の土(微塵)が大量に含まれています。袋の底に溜まっているあの粉です。これをそのまま鉢に入れてしまうとどうなるか。

水やりをするたびに、細かい微塵が水流に乗って鉢の底の方に沈んでいきます。そして、鉢底石やネットの周りで微塵が密に固まり、まるでセメントのような不透水層(粘土層)を形成してしまうのです。こうなると、いくら排水性の良い鹿沼土を使っていても、出口が塞がれているので水は抜けず、空気も通りません。結果、鉢底が常に湿った状態になり、根が窒息して根腐れを起こします。

必ず「ふるい」にかけよう
植え付け前には、必ず園芸用の「ふるい(ステンレス製の網)」を使って、この微塵を徹底的に取り除いてください。このひと手間を加えるだけで、水やりをした時の「ジャーッ」という水の抜け方が劇的に変わります。土の中の空気の通り道(気相)が確保され、根の成長スピードと健全性が格段に向上することを約束します。多くのプロや上級者が、この作業を「最も重要な工程」と位置付けています。

まとめ:鹿沼土と赤玉土の成長比較

今回は「鹿沼土 赤玉土 成長比較」をテーマに、それぞれの地質学的な特性から、実践的な使いこなし術まで、かなり踏み込んで解説してきました。長くなりましたので、最後に重要なポイントを箇条書きでまとめておきます。

📍要点の振り返り
  • 赤玉土は「団粒構造」で保水と通気のバランスが良い万能選手。
  • 鹿沼土は「多孔質構造」で排水性が抜群に高いが、保水力は限定的。
  • 赤玉土は「弱酸性」で多くの植物に合うが、鹿沼土は「強酸性」で植物を選ぶ(サツキ等には最適)。
  • 鹿沼土は栄養がなく保肥力(CEC)も低いため、こまめな液肥や緩効性肥料が必須。
  • 大きく早く育てたいなら、栄養と水を保持できる「赤玉土」をメインにする。
  • 形を引き締め、徒長を防ぎたいなら、ストレスをかけられる「鹿沼土」をメインにする。
  • 多肉植物の黄金比は「赤玉4:鹿沼3:腐葉土3」。ここから環境に合わせて微調整する。
  • 観葉植物のコバエ対策には、鹿沼土での表面マルチングが劇的な効果を発揮する。
  • 鹿沼土も赤玉土も無菌なので挿し木に最適。保水重視なら赤玉、通気重視なら鹿沼を選ぶ。
  • 買ってきた土は必ず「微塵抜き」を行うこと。これが長期的な成功を分ける最大の鍵。
  • 硬質鹿沼土や硬質赤玉土を選ぶと、粒が崩れにくく植え替え頻度を減らせる。

結論として、どちらが良い・悪いという話ではありません。赤玉土が持つ「保水・保肥力による安定した成長促進」と、鹿沼土が持つ「排水・通気性による強健な根の維持」。この二つの性質を正しく理解し、自分の育てたい植物の理想の姿(大きくしたいのか、色濃く締めたいのか)に合わせて、土の配合をパズルのように組み合わせることが重要なのです。

まずは小さな鉢で構いません。同じ植物を2つ用意して、片方は赤玉土多め、もう片方は鹿沼土多めで育ててみてください。その成長の違いを目の当たりにしたとき、あなたの園芸スキルは一段階上のレベルへと進化しているはずです。植物との対話、ぜひ土作りから楽しんでみてくださいね。